薄毛の悩みができればなにかと目にするようになった「5aリダクーゼ」という名称。
なんとなくAGAの原因ということはわかっても
- ニュアンスで把握しているだけで実際はどんなものかわからない
そんな人のために20代の頃から薄毛に悩みはじめ、現役で薄毛の治療を実践している筆者が5aリダクターゼの読み方から、役割や種類、抑制方法などをわかりやすく丁寧に解説。
さらに、薄毛に悩みはじめた人にとって「大切なこと」をお伝えしています。
「しっかり理解を深めながら、知識を自分のものとして吸収したい。」
そんな人にとって今後に役立つ学びのきっかけとなる記事になっていることでしょう。
5aリダクターゼ(読み方:ごあるふぁりだくたーぜ)とは、身体の成長に重要な働きをする酵素のことです。
主に男性ホルモンのテストステロンをより強力なホルモンのジヒドロテストステロン(通称:DHT)に変換させる働きがあります。
男女ともに体内に備わり、一生をかけて身体の成長に大きな影響を与える。
ただし、思春期と成人期で成長に与える影響は異なります。
- 思春期:DHTへの変換が促進されて二次性徴(体毛の増加、声変わり、外性器の発達)する
- 成人期:DHTが原因でAGAや前立腺肥大症を引き起こす
※(女性も5aリダクターゼで少なからず脱毛症状が起こる)
成長過程によって影響する内容が異なるものの、わたしたちの身体の成長に一生関わる重要な働きをしていると言えるでしょう。
次のセクションでは、5aリダクターゼが成長過程で与える影響を役割ごとにまとめ、より具体的に解説していきます。
参考文献:The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 89, Issue 5, 1 May 2004, Pages 2179–2184
5aリダクターゼについてさらに理解を深めるためには、具体的な3つの役割に分けるとわかりやすいでしょう。
- DHTへの変換
- 男性型脱毛症
- 前立腺肥大症
どれも身体の成長に欠かせない重要な役割であり、思春期と成人期では役割が異なるところがポイント。
それぞれ詳細な内容をわかりやすく解説していきます。
DHTへ変換して男らしい身体をつくる
5aリダクターゼはテストステロン(男性ホルモン)と結びつき、ジヒドロテストステロン(通称:DHT)に変換されます。
DHTはテストステロンと比べて強力な働きをするホルモン。特に男性胎児の発育や思春期の性的発達には欠かせません。
男らしい骨格や筋肉の生成をはじめ、ヒゲや体毛が濃くなり男性生殖器(前立腺)の形成・成長を促進する働きがあります。
思春期には男性にとってなくてはならない5aリダクターゼですが、成人期になるとDHTが身体へ与える影響がこれまでと相反するようになる。
というのも、男性型脱毛症や前立腺肥大症を引き起こす原因になり、ネガティブな印象を持たれる傾向にあります。
男性型脱毛症と前立腺肥大症について、順番に解説していきましょう。
男性型脱毛症の発症と深い関わりがある
成人期には男性型脱毛症(通称:AGA)の発症原因として、5aリダクターゼによるジヒドロテストステロン(通称:DHT)の生成が密接に関係します。
前頭部、後頭部、側頭部の5aリダクターゼの働きが活発になると、DHTが毛包に影響して脱毛症状を引き起こしてしまう。慢性的なストレスや過度な飲酒、喫煙により、5aリダクターゼの働きを抑える栄養素が不足するとAGAのリスクがさらに高まると危惧されるでしょう。
AGAを理由とする脱毛症状は、フィナステリドやデュタステリドなどをはじめとした、「5αリダクターゼ阻害薬」がDHT生成を抑制して脱毛症状の進行を遅らせる効果が医学的に証明されています。
- 抜け毛が多くて髪のボリュームが減った気がする。
- 生え際が後退しておでこが広くなったような。
このような意識がある場合、AGAの可能性があります。できるだけ早めに専門の医療機関を受診して対策を打つことをおすすめします。
前立腺肥大症の発症にも関与している
前立腺肥大症とはAGAと同様に5aリダクターゼを発端とした、男性ホルモンのDHT(ジヒドロテストステロン)が前立腺細胞の成長を促して前立腺が圧迫されて排尿障害を引き起こす症状のことです。
具体的な症状は次のようなものが考えられる。
- 尿が出にくくなる
- 頻尿
- 残尿感
- 尿漏れ
男性の体内にある小さい腺が前立腺。正確には膀胱と尿道のあいだにあります。(図)
前立腺肥大は加齢によって、5aリダクターゼの活動が活発になる時期に起こりやすい。
特に中年以降(40歳以上)の男性は体内のテストステロンがDHTに変換されやすく、前立腺細胞の成長が促進されて前立腺が肥大化する。
治療にはAGAと同様に5aリダクターゼの活動を阻害する薬剤が使用されます。
AGA治療とは目的や作用は異なりますが、フィナステリド・デュタステリドといった成分の内服薬が使用される。DHTの生成を抑制して前立腺の肥大を防ぎ、排尿障害を改善させる効果が期待されます。
体の成長を促す酵素の一種である5aリダクターゼは、さらにⅠ型とⅡ型といった2種類に分類されます。両者は体内に発現する範囲や活性度が異なるとされ、人によって特徴が異なる。
Ⅰ型 | 側頭部・後頭部や全身の毛乳頭細胞に分布 | 肌や頭皮が皮脂分泌が多い人 |
Ⅱ型 | 前頭部や頭頂部に毛乳頭細胞が分布 | 髭や体毛が濃い人 |
※近年の研究では上記の他にもⅢ型の存在が示唆されはじめているようで、視覚や神経系に関与するようです。
5aリダクターゼ「Ⅰ型」の特徴
Ⅰ型は毛乳頭細胞や皮脂腺をはじめとした全身に発現する可能性があり、特に側頭部や後頭部に多く存在しています。
毛乳頭細胞とはヘアサイクルの正常化を役割とする育毛促進因子のこと
ヘアサイクルについては別記事でも解説しています。「ヘアサイクルとは?周期の乱れが薄毛の原因!AGAとの関係を解説」
1990年代初期頃までⅠ型は男性型脱毛症(通称:AGA)とは関係ないと考えられていました。しかし、2000年代の研究から少しずつAGAの進行に関与する可能性が示唆されはじめ、日本では2015年に厚生労働省からデュタステリドという成分がⅠ型・Ⅱ型両方の活性化を抑制するAGA治療薬として認められました。
また、Ⅰ型の発現可能性が高い人の特徴は「肌や頭皮があぶらっぽい人」や「ニキビができやすい人」など、皮脂の分泌量によって判断できるでしょう。
5aリダクターゼ「Ⅱ型」の特徴
Ⅱ型は頭頂部や前頭部に発現しやすく、他にも脇や髭、陰部の毛乳頭細胞にも存在します。
Ⅰ型よりもⅡ型の方がAGAの発症に強い影響を与えているとされ、なかでも頭頂部や前髪の生え際に脱毛症状が感じられやすい。というのも、Ⅱ型は男性ホルモンのテストステロンがジヒドロテストステロン(通称:DHT)に変換する働きをするため、DHTが毛包萎縮を引き起こしてヘアサイクルを乱してしまうから。
頭部では脱毛症状による影響が危険視される反面、頭部以外の体毛(脇、胸、陰部など)を成長させることも考えられるでしょう。
Ⅱ型の発現可能性が高い人に「皮脂や体毛が濃い人」が挙げられます。
そもそも5aリダクターゼの発現可能性は人によって異なるので安易に判断せず、専門医の先生に診てもらったうえで適切な診断をもらうようにしてください。
もっとも高い有効性が期待できる方法は医学的に認められている治療薬を処方することでしょう。
治療薬を使用する場合は個人輸入での調達は充分に注意する必要があります。
特に一般に流通している海外の治療薬に関しては偽物や医学的な根拠が乏しい製品が紛れ込んでいるケースも珍しくありません。そのため、個人で海外の治療薬を調達するのは避けてください。
そもそも治療薬にハードルを感じるのであれば、毎日の生活習慣を見直すことからスタートすると良いでしょう。
ただし、治療薬ほど信憑性の高い方法は少なく、実感を得にくい場合がある点は留意してください。
ここでは5aリダクターゼの活性抑制に有効性の高い治療薬と日常生活に取り入れやすい栄養素をまとめました。
できるなら専門の医師へ相談して的確な処置のもと、治療薬を処方してもらうのがベストです。
薬を服用した有効性の高い治療
フィナステリド
フィナステリドは5aリダクターゼⅡ型の働きを抑制するため、前立腺肥大症や男性型脱毛症(通称:AGA)の治療に使用される医薬品です。
経口型のフィナステリドには5aリダクターゼⅡ型によるテストステロンをジヒドロテストステロン(通称:DHT)に変換する働きを抑える効果が期待され、前立腺肥大症の治療薬として開発されました。
薬を使用していた患者に抜け毛が減り、毛髪が再生するといった副次的な効果が見られたことでAGA治療に使用されています。
日本皮膚科学会のガイドラインにはAGA治療に対する推奨度として最も高い「推奨度A」に分類されている高い有効性を示している。
形状は固形タイプで1日1回1錠を毎日飲むことを続けるのが基本的な服用方法。
服用タイミングには厳格な決まりこそないものの、次の服用までは24時間空けるような説明があるようです。
効果が現れるまでには約6ヶ月以上の期間が必要になるので長期的な服用が必要になると予想されるでしょう。
副作用には性欲の減退や精液量の減少など性機能に関する副作用が示唆されているため、妊活中の場合にはおすすめできません。また、妊娠中の女性は服用を避けてください。
厚生労働省の注意喚起には次のように明記されています。
男性型脱毛の治療に使用されている「プロペシア」(成分名:フィナステリド)については、妊娠中の女性では男の胎児の生殖器に異常を起こすおそれがあることが米国FDAが公表する注意事項に掲載されています。 (“プロペシア(PROPECIA)(男性型脱毛症用薬)に関する注意喚起について |厚生労働省”)
参照元:日本皮膚科学会ガイドライン|男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
デュタステリド
5aリダクターゼⅠ型Ⅱ型の両方の働きを抑制する効果が期待されるデュタステリド。
フィナステリドと同様に経口型の治療薬には、前立腺肥大症や男性型脱毛症(通称:AGA)の改善に高い有効性が期待されています。
もともとはアメリカで2001年に前立腺肥大症の治療薬として(※)FDA(Food and Drug Administration)に承認された医薬品です。
日本では2015年に厚生労働省がAGA治療への有効性を確認したことによりAGA治療薬として広まりました。
フィナステリドは5aリダクターゼⅡ型にしかジヒドロテストステロン(通称:DHT)の抑制に効果を発揮しない反面、デュタステリドはⅠ型・Ⅱ型の両方に広範囲に作用するより強力な治療薬です。
補足:Ⅰ型は皮膚や肝臓に多く存在し、Ⅱ型は頭皮や前立腺に多く存在する
効果が強力な分、副作用のリスクも若干ですが高まります。
スウェーデンの学術誌に掲載されたメタ分析では、被験者のうちフィナステリド使用者の5.31%とデュタステリド使用者の8.27%が性機能障害を経験したと報告されました。
副作用のリスクは双方で異なるものの、統計的にはフィナステリドとデュタステリドで明確に優位性を持つことはありませんでした。
※FDAとはアメリカの食品や医薬品、医療機器などの安全性や効果を管理・規制しているアメリカ政府(保健福祉省)の公的な組織。
亜鉛を含む食材を摂取する
亜鉛には抗酸化作用があり、細胞の酸化ダメージを防いでくれます。他にもホルモンバランスを正常に保つ役割もあるので5aリダクターゼを抑える効果があります。
英国皮膚科学会による研究でも亜鉛が5aリダクターゼの活性を阻害する効果があると報告されている。特に試験管内で硫酸亜鉛を3〜9mmol/l(ミリモル・パーリッター)の濃度で添加した研究では強力な抑制効果がありした。さらに高濃度の場合は完全に5aリダクターゼを抑制する効果が立証されています。
また、ビタミンB6と組み合わせると亜鉛の抑制効果がより強まるともされており、5aリダクターゼの抑制効果によってDHTや前立腺肥大症に有効に作用する可能性があるでしょう。
ただし、研究はあくまで試験管内でしか行われていません。人体でどのように作用するかはさらなる研究が必要とされているため、過度に意識する必要はないでしょう。
普段の食事に亜鉛を含む食材を摂取できるのであれば、バランスを考えながら取り入れるようにすると良いですね。
亜鉛を含む食材 | |
カキ | 亜鉛が非常に豊富に含まれる食材。 |
赤身肉 | 牛肉、豚肉など。特にヒレ肉のような部位に多く含まれる。 |
ナッツ類 | カシューナッツ、アーモンド。植物性の食品では亜鉛の含有量が多いとされる。 |
豆類 | ひよこ豆、レンズ豆、黒豆など。 |
全粒穀物 | オートミール、玄米、キヌアなど。 |
乳製品 | 牛乳、チーズ、ヨーグルトなど。特にチーズには多く含まれる。 |
参照元:British Journal of Dermatology, Volume 119, Issue 5, 1 November 1988, Pages 627–632
参照元:Inhibition of 5 alpha-reductase activity in human skin by zinc and azelaic acid.
オメガ3脂肪酸で体内の炎症を防ぐ
5aリダクターゼの活性が強くなる要因には、体内の炎症が関わるとされています。
体内の炎症とは文字通り人の体が慢性的なストレスや不摂生な食事などの理由により、細胞レベルで炎症を起こしている状態のこと。
オメガ3脂肪酸は体にとって重要な必須脂肪酸であり、体内の炎症を抑える抗炎症作用があります。
厳密にはオメガ3脂肪酸の一種である、a-リノレン酸が炎症性物質(サイトカインやプロスタグランジンなど)の生成を抑えて酸化ストレスを軽減させた結果、ホルモンバランスの維持や5aリダクターゼの過剰な活性が抑制されるのです。
サイトカインとは、免疫系の調整や炎症反応を調節する役割をもつタンパク質のこと
魚介類 | サーモン、マグロ、サバ、イワシ、ニシン、アジなど。特に青魚にはEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富。 |
植物油 | 亜麻仁油、チアシード油、エゴマ油などに含まれるa-リノレン酸(ALA)は体内でEPAやDHAに変換される。 |
ナッツ類 | くるみ、チアシード、ヘンプシードなどの大豆製品(豆腐、納豆、大豆油など)にもオメガ3脂肪酸を摂取できる食品です。 |
ビタミンB群もホルモン代謝や抗炎症作用があるけど…
ネット上で5aリダクターゼを抑制する栄養素にビタミンB群を含む食品が紹介されていますが、実は直接的な抑制効果を明確に立証したエビデンスは数少ないようです。
ビタミンB群はホルモンバランスを整えて抗炎症作用を持っているため、体内のテストステロンの代謝を助けてDHTの生成を抑えていると仮説されます。
しかし、理論的に抑制効果を期待できますが、実情はビタミンB群が5aリダクターゼを抑制する具体的なメカニズムがはっきりと立証されたわけではありません。
ビタミンB群自体は健康に良い影響を与える栄養素であることは確かなので、いつもの食事に積極的に取り入れて損はないでしょう。
ここまで5aリダクターゼについての概要を紹介してきましたが、理解は深まりましたか?
5aリダクターゼには主に以下のような特徴があることがわかりましたね。
- 身体の発育に大きな影響を与える酵素
- 男性ホルモンのテストステロンをジヒドロテストステロン(DHT)へと変化させる
- 成人期以降は男性型脱毛症(AGA)や前立腺肥大症を誘発させる原因になる
- Ⅰ型・Ⅱ型に大別できて脱毛症状の原因になる
- 活性を抑制するには治療薬の処方は有効性が高い
5aリダクターゼという名称や作用について知っていたという人にも学びになる内容になったのではないでしょうか。
特に薄毛の悩みを抱えている人にとっては、QOLに関わる繊細な問題です。にもかかわらず、ネット上には医学的な根拠に準拠していない情報をもとにした記事が少なくありません。本ブログではひとつひとつの記事に医学的な根拠と矛盾がないか精査した記事づくりを心がけています。
しっかり学習して自身の知識を深めながら薄毛の問題を解決したい人にとって、きっとお役に立てるでしょう。